介護事業支援への糸口



ここでは、当事務所が考える介護事業の経営についてどう実行していくべきか、様々な角度から考察してみたいと思います。


介護事業を営む皆さんは今、以下のことにお悩みではありませんか?


・売上が伸びない、むしろ落ちていく。
・会社の規模に比べて人件費が過剰である。
・人員を確保するのが困難である。
・従業員からの不満が絶えない。
・資金繰りが厳しい。

まだまだあるかと思いますが、介護事業所が抱える代表的な問題を列挙してみました。
今後、この日記ではこういった問題を解消する方法を皆さんと一緒に考えて行きたいと考えております。


世田谷区・渋谷区を中心に活動する税理士

介護保険制度改正の要点 2007.7.24

前回の記事で、介護保険制度がなぜ改正されなければならなかったのかについて言及しました。今回は、その改正で具体的に何が変わったのか分かりやすく説明したいと思います。

この改正には5つの柱があります。

@予防重視型システムの確立
A施設給付の見直し
B新たなサービス体系の確立
Cサービスの質の確保・向上
D負担の在り方・制度運営の見直し

これらの中でも訪問介護に係る項目について掘り下げて行きたいと思います。

@予防重視型システムの確立
 これは、要介護認定を受けている利用者の約半数を占める、介護度が低い「要支援」・「要介護1」の利用者を「要支援1」・「要支援2」という新たなカテゴリーに振り分けて、介護保険給付を抑えよう、という試みです。
 つまり、この「要支援1・2」に認定されるということは、もはや介護は必要ないと認定されたも同然なのです。今後介護が必要にならないように自立できるようになりましょう、という考えのもとに確立されたシステムなのです。
 ところで、なぜ介護保険給付が抑えられるのかというと、これは介護度によって介護保険給付の支給限度額が定められているからなのです。以下に支給限度額を記します。


・改正前「要支援」 の月額支給限度額 ⇒  61,500円
・改正前「要介護1」の月額支給限度額 ⇒ 165,800円
(改正後も「要介護1」の月額支給限度額は変わりません)

             ↓

・改正後「要支援1」の月額支給限度額 ⇒  49,700円
・改正後「要支援2」の月額支給限度額 ⇒ 104,000円

「要支援」だった方が「要支援1」に認定されると、月額最大11,800円分の介護保険サービスが受けられなくなります。また、「要介護1」だった方が「要支援2」に認定されると、月額最大61,800円分の介護保険サービスが受けられなくなります。

 また、「要支援1、2」に認定されると生活援助サービス(炊事・洗濯など)の利用時間がこれまでより短く制限されることになったので、利用者やご家族の落胆は否めないでしょう。裏を反せば、このことは介護事業所の売上が減少することを意味します。

 このシステムは、こうした介護保険給付を抑制する効果を狙ったとも言えるのではないでしょうか。

 次回は、「新たなサービス体系の確立」についてご説明したいと思います。



世田谷区・渋谷区を中心に活動する税理士

介護保険制度改正の背景  2007.7.11

平成18年4月より、介護保険制度の大幅な改正が実施されました。介護保険制度は平成12年にスタートしましたが、この改正がこの時期に行われたのには理由があります。それは、介護保険法の附則第2条において、介護保険法施行後5年をめどに、被保険者及び保険給付を受けられる者の範囲、保険給付の内容・水準、保険料負担のあり方など制度全般にわたる必要な見直し等の措置を講ずる旨を定めていたのです。つまり、平成17年にいったん制度を見直しましょうということをあらかじめ法律で定めていたのです。これにより実際、平成17年6月に改正介護保険制度が成立しました。そして翌年4月から施行されるに至ったわけです。

それでは実際に、平成12年からの法施行後、介護サービスの現状はどのように推移しているのでしょうか。
サービス利用者の推移
 ・平成12年4月分の利用者数149万人
 ・平成17年4月分の利用者数329万人
 ⇒結果、5年間で利用者数は121%増になりました。

在宅サービス事業者数の推移
 営利法人とNPO法人の参入が顕著でした。
 ・平成13年5月事業者数
  @営利法人 21,882
  ANPO法人   682
 ・平成17年5月事業者数
  @営利法人 50,585
  ANPO法人 2,735
 ⇒結果、営利法人は4年間で131%増、NPO法人は301%増になりました。

介護保険財政(総費用)の推移
 ・平成12年度実績 3.6兆円
 ・平成18年度予算 7.1兆円
 ⇒結果、総費用は99%増となる見込みです。

これらの主な推移を見てみると、介護サービスの利用者やサービスを提供する事業者数は急速に増大し、介護保険制度は老後の安心を支える仕組みとして定着してきました。
しかし、介護保険の総費用も急速に増大しているため、スタート当初の制度のままでは、保険料の大幅な上昇が見込まれ、制度の持続が難しくなる可能性がでてきました。
つまり、40歳以上の方から徴収している介護保険率を上げないと制度を維持できなくなる可能性が出てきたということです。

以上の推移に関する内容は厚生労働省が出している介護保険制度改革の概要の一部をさらに要約したものです。

察するに、平成12年から法改正までの期間における介護保険制度は、いわゆるお試し期間だったということが言えるのではないでしょうか。
はじめてだから基準が分からない、とりあえずこんな感じで、というスタンスで始まったため、不正受給などの問題が起こり、財政が圧迫されてしまったのでしょう。そして、急に引き締めに入ったため、事業者は苦境に立たされさらに不正に走るといった悪循環が起こってしまったのではないでしょうか。制度改正により体力のない事業者は淘汰されていくことになるでしょう。厳しい現実ですが、生半可な気持ちで運営できる事業ではなく、高い志と強い信念を持ち合わせていなければ生き残れない業界だということなのでしょう。

それでは次回、介護保険制度がどのように改革されたのかをご紹介していこうと思います。




世田谷区・渋谷区を中心に活動する税理士

介護保険サービスの実態調査報告  2007.7.4

世田谷区が平成18年11月30日現在の要支援・要介護認定を受けている第一号被保険者(施設入所者を除く)及び同認定を受けていない第一号被保険者約14万人の中から6,000人を抽出して介護保険サービスに関するアンケート調査を行いました。回答者の人数は3,403人となっています。

当税理士事務所では、このアンケートの内容と結果について数期間に渡り徐々にご紹介し、これからの介護保険サービスのあり方について考えて行きたいと思います。

世田谷区は介護保険事業を地域保健福祉の大きな柱のひとつとして位置づけ、介護保険、他の福祉サービスおよび区民や事業者の多様な活動がバランスをとりながら高齢者の自立を支援していく、誰もが安心して老後を迎えられる地域社会の形成をめざしており、今回のアンケートもそうした理念のもとに行われました。事業者の皆様も今回の調査結果を活用し、今後のサービス向上のための参考にして頂ければと思います。


それではまず、要支援・要介護認定を受けた第一号被保険者を対象としたアンケート結果についてご紹介致します。

Q.性別は?

  A.男性28.6%  女性64.5% 無回答等6.9%

 この結果からすると介護サービスを受けているのは女性のほうが圧倒的に多いと言えるのではないでしょうか。介護事業において現場で働くヘルパーさんも女性の割合が圧倒的に多いようです。


Q.困った時の相談相手(複数回答可

  A.子供・子供の家族63.6% 医師30.7% 配偶者28.6%
    ケアマネージャー28.3%の順になっています。

 この他にもいくつか選択肢がありましたが、ほぼ10%以下の割合になっていまいした。この結果を見ると、利用者さんの介護の充実を図るにはご子息とのコミュニケーションは欠かせないということが分かります。利用者さんから直接聞けないサービスに対するご意見についても、ご子息とコミュニケーションを図ることにより聞くことができるかもしれません。サービス提供を行うものとして、お客様からの意見よりためになるものはないと言っても過言ではありませんから。
 
Q.将来どこで介護を受けたいか

  A.現在の住まい57.5% 特別養護老人ホーム8.2% 介護サービス付高齢者住宅5.5% 医療機関・老人保健施設5.3% 

 この他にもいくつか選択肢がありましたがいずれも5%未満でした。ちなみに、「子供の家に転居して生活」は2%だった。できることなら子供には迷惑をかけず、住み慣れた家で余生を過ごしたいと願う高齢者の方が多いということなのではないかと思います。その願いを実現する為にも、充実した介護保険サービスの提供が必要になってくるのです。


Q.介護サービスの利用状況

  A.利用している71.5% 一度も利用したことがない15.2% 以前は利用していたが現在は利用していない7.7%

  認定を受けていても利用していない人が3割くらいいらっしゃるんですね。もちろん介護サービスは強制ではないので必ずしも利用する必要はありません。しかし、どうして利用しないのでしょうか。そのヒントが以下の質問にあるかもしれません。

Q.介護サービス中断時期(以前は利用していたが現在は利用していないと答えた方を対象)

  A.平成18年4月以降32.7% 平成17年中13.1% 平成17年以前23.2% 

平成18年4月に介護保険制度が大幅に改正されました。

Q.中断の理由

  A.介護保険制度改正で利用できなくなった又は利用しにくくなった15.5%
    家族による介護にした14.9% 介護サービスを利用しなくとも生活できるようになった14.3% その他の理由48.2%
 
 その他の理由として、「病院等に入院した」・「グループホーム・有料老人ホームに入居した」・「住宅改修で利用しただけ」などがある。
 理由は様々ありますが、利用中断時期を見れば、制度改正が中断の大きな要因となっていることは明らかだと思います。 

それではこの介護保険制度の改正とは一体どういうものだったのでしょうか。
次回はその概要についてご紹介したいと思います。 

ちなみに、アンケート結果についてはまだ沢山項目がありますので徐々にご紹介して参ります。





世田谷区・渋谷区を中心に活動する税理士

介護保険制度の意義を考えて!

コムスン事件以来連日介護事業のあり方について、新聞・テレビ・雑誌など多数のメディアが取り上げていますが、我々は利用者(将来の利用者を含む)としてこの事件をどのように捉えなければならないのか、この事件の本質を見過ごしてはいないか、と私なりにコムスン事件をたたき台にして介護事業の問題について言及してみたいと思います。

平成12年に始まった介護保険制度により、多くの営利法人が介護市場に参入してきました。政府は介護事業で利益を追求することを認めたと言っても過言ではありません。今回の事件を受けて、介護サービスは非営利の福祉サービスに適しており、営利目的で行うサービスではないという議論がありますが、それは一つの結果論ではありますが、既に多くの利用者と事業者を飲み込んだ大規模な市場となっている介護市場の現状を考えると意味が薄い気がします。
何より、そもそもこの介護保険制度の意義を思い出して下さい。日本は他国と比べ少子高齢化が急速に進んでおり、従来の高齢者に対する福祉・医療制度では充実した介護サービスが提供できないことが分かってきたからこその制度成立だったはずです。

介護サービス利用者はこれまでの行政主導の画一的で受身なサービスから、自己の意思でサービス提供者とサービスの範囲を選ぶことができるようになりました。介護事業者は質の良いサービスを提供しなければ介護サービスを利用してもらえません。ここに介護サービスの質を向上させる原理があるのです。

コムスン事件を受けて、介護サービスにおいて利益を追求することは悪いことだと考えるのは、あまりにも短絡的過ぎるような気がします。
利益を追求することではなく、不正を行うことが悪いことであり、不正を行うことは事業者のモラルの問題であると私は考えます。

私は今回の事件で、介護事業を営むことは素晴らしいことであり、社会的に非常に意義のある事業だということを再確認して頂きたい、そして、それと同時に介護事業者のモラルについてももう一度再確認して頂きたいと思いこの記事を書きました。

この他行政についても言及したいことがありますが、それはまた別の記事で書きたいと思います。




(2007年6月13日)
世田谷区・渋谷区を中心に活動する税理士